第十二章

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『…君は優しいね…ありがとう、真心君。』   翼は笑顔でオレに言った。本当はオレは翼の悩みや苦しみを理解してやりたかった。そして一緒に悩んで、考えたかった。でも、オレにはそれは出来ない。今、オレに出来ることは、翼の悩みを一つ消しさる事……゙白い家"から皆を解放することだ。 沈黙が続いた。お互い他に話す事はもうなかった。しかしこの沈黙がオレにとっては心地よかった。この時間がオレの決意の強さを表しているように思えた。 ……しばらくしてオレは口を開いた。   『わざわざオレに話してくれてありがとう、翼。明日はいよいよ決戦だ。しっかり休もう。』   『そうだね…。これが最後の夜にならないようにしないとね。』   『馬鹿!縁起でもないこと言うなよ!』   『ごめんごめん。…………ははははは。』   オレと翼はしばらく二人で笑ってテントに戻った。この日、空には綺麗な満月が輝いていた。
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