第十三章

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『摩擦力といっても動摩擦や静止摩擦がありますが、それじゃないんです…。彼の力は摩擦によって起こる゙熱エネルギー"の大きさを゙操作"する事ができるのですよ。』   オレはもう一度自分の腕を見た。この腕のただれは火傷だったのか…。どうりで絶対零度に近い温度の氷が一瞬で気化したわけだ。神原は満足気に続けた。   『そう、右手で起こした摩擦熱エネルギーは増大し、左手で起こした摩擦熱エネルギーは減少するのです。 そしてそれを最大限に引き出すための゙舞"をイメージさせる鞭打…鞭打なら効率的に摩擦を起こせますからねぇ。きゃきゃきゃ!!』   翼は打撃に対しては無敵に近い能力だが、熱に関しては人並みにダメージを受ける。准也との相性は最悪だった。しかし翼はオレが来るまで准也と戦っていた。一般人と能力者との戦いと言ってもおかしくないくらいなのに。 翼の奴…無理しやがって。   しかしオレは何だ?目すら合わせる事もしない親友にひたすら話し掛け、左腕をなくし、地面に倒れ込んでいる…。何もしてない。何も出来てない。このままではオレも翼も殺される。それでいいのか?今の時点で仲間の救出には成功している。オレの当初の目的は果たせた。じゃあもう死ねるのか?   …違う!!オレにはまだやる事がある。まだやるべき事が…。   『はぁはぁ…』   オレは立ち上がった。
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