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終わり?今まで一緒に過ごして来た准也が?オレにはそんな事は想像できなかった。怖い…その感情だけがオレの頭の中をぐるぐると回り続けた。オレは震えた声で准也に言った。
『馬鹿!!終わりって…勝手すぎるだろうが!!オレはどうするんだよ?お前が死んでしまったらオレはどうしたらいいんだよ!?それにさぁ、お前、まだ物理のやり直し終わって無かっただろ?手伝うから、一緒にしようぜ?なぁ?准也ぁ…』
しばらくの沈黙がオレ達の間に流れた。
『…あれ?真心、何もしゃべらないのか?まぁいいや…』
もはや准也は聴力を失っていた。死が徐々にリアル化されるのがわかる。
しかし息が弱々しくなっているにもかかわらず、准也から笑顔は消えなかった。
『…真心。オレはな、ずっと自由が欲しかったんだ。自由を体のすべてで感じたかったんだよ。それはオレが死ぬ前からだぜ?ずっと前からだ。
だから…今な、オレはすごく幸せなんだ。もうすぐずっと欲しかった自由を手に入れる事ができる。大親友のお前のおかげだよ、真心。ありがとな…』
『愛してるぜ…真心…』
そう言うと准也はウインクをした。もうどっちの目が開いているかわからない、不器用なウインクを多分…オレにした。
そのまま准也は目をとじ、やがて呼吸も止めた。
とても穏やかで、静かで、准也が言った通り…とても幸せそうな表情で眠っている。
『バカヤロウ…そういうのはいいってあの時言ったじゃないか。成長しねぇなぁお前は。
…馬鹿だよ…馬鹿野郎だよ…ホントに…なぁ、何か言えよ…聞こえているんだろう…准也ぁ…なんか言ってくれよ…お願いだから…准也……』
オレは准也を抱きしめ、大声で泣き叫んだ。泣いてもこの状況をどうすることも出来ない事くらいわかっていた。しかし今はそれ以外に出来る事なんて何も無かった。
だからオレは声が出なくなるまで、涙が枯れるまで、全力で泣き続けた。
今はもういない准也がオレという存在をずっと忘れる事がないように。
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