最終章

3/6
前へ
/175ページ
次へ
 翼はニヤリと笑い、呆れたようなため息をついてオレに言った。   『それ、昨日の夜にオレが君に言った事じゃないか…まぁいいけど。じゃあ、君もオレと同じ意見だって考えてもいいんだね? ここで何年も、何十年も、再び術(すべ)を悪用しようとする者が現れるまで待つ…そういう考えだって事だね?』   オレは頷いた。しかし、大樹や耕平はどうやら何か引っかかっている様子である。大樹が言った。 『何年はわかるけどよお、何十年ってのはどうすんや? そん時オレ達はみんなジジイやし。それに何十年どころか何百年になる可能性もあるやろ?ハマで時間を操作するとしてもこの人数、とてもじゃねぇが体力がもたねぇよ。』 オレは自分の頭を人差し指でトントンと突つきながらその質問に答えた。   『いや、そこは大丈夫だ。オレの術(すべ)を使えばいい。水に入ったオレ達を一瞬で凍らせるんだよ。簡単に言えば冷凍保存だ。気温は夏でも40℃くらいが限界だろ?なら変換で40K。したがって-233℃…オレが能力を解除しない限り、絶対溶けないよ。』           しばらく沈黙が続いた。それもそのはずだ。オレはともかく、皆は長い間゙外"での生活をしてきた。友人や仲間もたくさんいるはずだ。数十年も悪用者が現れる事がなかったらその友人達に会う事も、もう出来くなってしまうのだ。オレは皆に言った。 『別に強制はしない。それぞれの人生だ。無理はしてほしくはないんだ。それに翼とオレだけになったとしても何とかなるだろうしね。』   耕平はフンと鼻をならし、またいつものようにニヤリと笑った。   『水臭ぇこと言ってんじゃねぇよ。オレはお前達と一緒に眠るぜ。…なんせ帰っても残業ばっかでプライベートなんてあったもんじゃないしな。』   タケヤスは耕平に『お前らしいな』と言って笑ったが、すぐに真面目な顔に戻り、オレと拳を合わせて言った。   『オレもその話しに乗った!徒手格闘の試合よりこっちの死合のほうが燃えるしな。しばらく世話になろうかな?』
/175ページ

最初のコメントを投稿しよう!

114人が本棚に入れています
本棚に追加