第十章

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『二年前は福岡。去年は長野…。私には何にも言わないでいつも何処にでも行っちゃう。今回は、゙ただ旅がしたくなった"って理由じゃないだけましだけど。……大樹の事だから止めても行くんでしょ?』   それを聞いて大樹は頷いた。加奈はフンッと鼻をならし、言った。   『仕方ないか…。男の子は愛情よりも友情を大切にするんでしょ?なら私に勝ち目ないじゃん。止める力なんてないよ。』   大樹は少しの間下を向いて喋らなくなったが、すぐに顔を上げて言った。   『絶対死なない!!生きて帰る。約束するから。だけん、もう泣いたりすんな。』   加奈は立ち上がって海の方に歩いた。少しの間、上を向いていたが振り返り、ニッコリ笑って言った。   『もうちょっと気が利くこと言えないの?まぁ、大樹らしいけどね。 ………待つよ。絶対に帰ってくるんでしょ?なら、私が悲しんだり怒ったりする理由も無い。悪の親玉をガツンと懲らしめてきちゃってよ。そのアンタの馬鹿力で。』   『…ありがとな、加奈。』   『いいってことよ!!それじゃあ、皆も待たせてるし帰ろうよ。大樹。』   『ああ、そうやな。』   大樹がそう言って後ろを向いて歩きだそうとした時だった。   『きゃぁああ!!!』
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