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驚いたように目を見開く朔夜、拳を握り締める弘人、そして何で?と表情で訴えるはる。
「何で!何でだよ郁月!俺ら親友だろ!?」
「郁月。弘人もそう言ってる、帰ってこい!」
「黒猫……」
あぁ、なんて滑稽。
俺を捨てたのはオマエラだろ?
俺は微笑んだ。
優しく、酷く優しく。
その表情に食堂から息をのむ音が聞こえた。
「俺を愛してくれない飼い主なんてイラナイ。ねぇ、零騎?」
「大丈夫だよぉ?郁月。俺はどっかの誰かとは違ってぇ、浮気なんてしないよぉ?」
「……にゃあ」
俺は当て付けのように零騎にキスをする。
唇を舐めるだけのキスを。
ただ猫のような声で鳴いて、飼い主に擦り寄るだけ。
「黒猫はもういない。愛してくれない飼い主に飽きた黒猫は、愛に飢えて銀色になった……にゃあ?」
俺は無表情で鳴いて、主人の愛を求める。
ほら、俺を愛して。
甘やかして、ドロドロになるまで。
首輪に鎖を繋いで永遠に逃げられないように。
「嘘だ!郁月!俺が最近かまってなかったから拗ねてるんだろ!?」
叫ぶ弘人。
前から感情の起伏は激しかったがこれは一段と酷い。
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