突破口

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「戦艦の艦長として、本懐であります!すぐさま、見学者を下艦させ、出撃準備に入ります。」 目をキラキラさせながら、受話器を握る艦長の顔が、容易に浮かんだ。 電話を切るとトマスが部屋に入り 「いま、ミズーリのマック大佐に要請したよ。」 「で、なんと?」 「艦長として、本望だと快諾してくれたよ。」 「軍人の願望は世界共通ですな。」 二人は笑った。 ~ハワイ真珠湾~ 「機関始動!」 大和艦長福山が下命 「艦長、自力航行となりますと船体への負荷が気になります。」 副長三村中佐が言った。 「まあ、何せ最後に射撃したのが1995年で実戦に至っては60年近くしていないからな。」 「訓練も発射方法ぐらいで測距などしておりません。」 「実際に戦闘となれば、ミズーリの方が役に立つだろうな。」 「よく、引き受けましたね。」 「ははっ。副長、君もこの大和が世界最大の巨砲を放つところをもう一度見たくはないのかね?」 「それは、思いますが…」 「とにかく、本来このまま記念艦で生涯を終えるはずの戦艦が再び必要とされたから、軍人として任務を全うしたかっただけだよ。」 「分かりました。全乗組員粉骨砕身で頑張ります!」 「その意気だ。」 福山は三村に微笑んで答え艦内マイクを持った。 「総員に告ぐ。我々は、本来イベントの打ち上げ花火を撃つ役目であったが、神の悪戯か悪魔の罠か特命を受けて出撃する事となった。諸君等は戦闘訓練はしていないため、非常に不安だと思うが幸運にもかつて、大和と共に戦った「大和会」の有志がついておる。先輩の指示で奮闘を期待する。以上!」 「大和会の方々がおられるのなら、安心です。」 三村は安堵した。 大和会とは、かつて大和の乗艦経験がある人々の集まりで、今では記念艦となった大和の整備をしていた。今回、ハワイに曳航するため代表者数十名が乗っていたのだ。 「艦長。ミズーリが出航し、我に続けの信号旗を掲げております。」 「回答旗を掲揚せよ。」 「宜候」 「錨上げー!両舷微速!」 「りょ~げんびそ~く!よ~そろ!」 「大和出航!」 戦いの女神二人は再び、その力を示すため、出航した。
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