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「ねー、これなあに?」
少女が、向かいに立っている少年に問いかける。
場所は夕暮れの公園。今日は、少年が少女にお別れを言いにきた日。
「これを、ぼくだと思って」
少年が手渡したのは、キラキラ光るネックレスだった。
近くの雑貨店で買った安物だが、少年からしたら大金の買い物だった。
「いつか、『 』ちゃんをお嫁さんにするから。その約束」
「お嫁さんにしてくれるの?」
少女の目がキラキラと輝き、頬がうっすらと赤くなる。
「うん。一緒に小学校には行けないけど、いつかお嫁さんにする」
「ありがとう『 』くん」
受け取ったネックレスを両手で大切に握りしめ、そっと胸元によせる。
「一生大切にする」
「うん」
少年はなんだか気恥ずかしくなり、目をそらしてしまう。
「だったら私のも」
そう言って今度は少女が、少年にあるものを手渡す。
それは、普段少女が肌身離さず持ち歩いている、犬の抱き枕だった。
「これ、『 』ちゃんの大切な抱き枕じゃないの?」
「私からの、お嫁さんの約束」
「『 』ちゃん・・・」
「だから『 』くんも、この抱き枕を大切にして?」
「・・・うん、わかった。一生大切にする」
最後に2人はお互いの手をとりあい、
「今日の夜にはもう引っ越しちゃうから、これでお別れになっちゃうけど、いつか・・・またね」
少年のほうからそっと手をはなし、歩き去ろうと後ろを向いたそのとき、
「ーー『 』くん!!ーー」
呼ばれ振り返ったときには、少年の口は、少女の口でふさがれていた。
それは、甘酸っぱい、小鳥のようなキス。
「・・・約束だよ? また、いつか・・・」
「うん・・・また、いつか・・・」
少年と少女は、お互いのことを、想いながら、別れた。
それから9年の時を経てーー
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