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「ママ!? いつの間に……」
「話は全部聞いたわ。桐生君が異世界人なのは間違いないと思うわ」
何か有力な情報を知っているのか、ルーナの母親は確信めいた表情をしていた。
「私の旦那が異世界人だから分かるもの……旦那も異次元空間を通ってこの世界に来たの」
成る程、あのフワフワ空間を旦那様が通ったのか……。
「まあ、とは言っても、旦那は一人で通ったわけじゃないんだけどね?」
「どういう事ですか?」
「旦那は異次元空間を現出できる人間と一緒にこの世界へ来たということ」
空間を現出させるって、それじゃあまるで……。
「気付いたかしら? 貴方はその異世界人と同じだって事が……」
成る程……知らない内に、俺は次元使いの本物のチートになっていたというわけだ。
そうなると、消えた世界の住人はどうやって異次元を通ったのだろう……。流石に、世界規模の人間が次元空間を開けるとは思えない。
じゃあ、消えた人達……親父と母さんは一体。
「ちなみにこの世界には、魔法という力があるのだけど」
「魔法? あー、さっき路地裏の時ルーナが言ってたな。じゃあ俺の力は魔法に関係してるんですか?」
「極稀に、他の世界で魔法を使える人が生まれると聞いた事があるけど、どっちみち次元の魔法なんて聞いた事ないわね」
じゃあ俺の力は何なんでしょうか……。そうなるとやはり、俺以外が異次元空間を開いてこの世界に来たという線は無くなったな。
というか魔法とか何処までファンタジーなんですか。
不安もあるが、常日頃憧れていたチートになれる世界。
確かに俺の望んだ世界だ。しかし、素直に喜べないのは、消えた親父達が気掛かりだからだろう。
親父……母さん。
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