*長谷川のその後*

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他人行儀なのはわざとなのだろう。 それでも俺は来てくれたことに感謝していた。 花に会わせてくれたこと。 きっと俺に会うのは怖かったに違いない。 今ならわかる。俺はあのころ少しおかしかったのだ。 愛するものに暴力を奮うなどあってはならないことだと、母と過ごすうちに理解していた。 守るべきものを壊していたのだと反省もした。 でもそれは俺自身のことであって、涼子の心の傷が癒えた訳じゃない。 それでも会いに来てくれたのは、花の父親だということを尊重してくれたからなのだと思う。 本当は花にも怯えられてしまわないか心配していた。 だから、昔のようにパパと呼んでくれて抱きついてきてくれたとき、わかったのだ。 涼子が俺のことを、パパのことを悪く言わずにいてくれたこと。 そうじゃなきゃこんな風になんの警戒心もなく俺に体を預けるわけがない。 「涼子……ありがとう」 花の体を抱きしめながら、俺は初めて涼子に礼を言った。 いろんな意味をこめて。 「なんか勇さん、雰囲気変わったね」 礼を言った途端驚いたように目を丸くしていた涼子が、やがてフッと顔を緩めてそう言った。
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