*長谷川のその後*

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そのとき、俺は初めて涼子の本当の意味での笑顔を見たような気がした。 いつもオドオドと俺の顔色を窺うような愛想笑いを浮かべていた涼子の、本当の笑顔。 あのまま暴力で支配していたら到底見ることの出来なかったものかもしれない。 自分がほんの少し変わっただけで、相手の反応もこんなに変わるものなんだと妙に感心してしまう。 涼子が言うように俺の雰囲気が変わったのだとしたら、それは母のおかげだ。 きっと母にはわかっていたのかもしれない。 「そうかな?」 「うん、なんだか優しくなった」 失ったものはあまりにも大きい。 けれど、失わなければ気づかなかったかもしれないこともある。 「涼子こそずいぶん変わったよ」 「え?そお?」 「あぁ、なんだか頼もしくなった」 クスッと笑いながらそう言うと、涼子は少し恥ずかしそうに顔を赤らめる。 「外で働き始めたからかもしれないね?花のためにも頑張らなきゃって思ってるし」 本当は小さな子を置いて働くってことに対して今でも賛成なわけじゃない。 だから養育費だってしっかりと払っているつもりだった。
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