*長谷川のその後*

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こんなやりとりをするなんて、あの頃は想像もしなかった。 穏やかで優しい時間が、こんなにも心を満たしてくれるなんて。 「そうだな、やっぱり花が一番かな」 わざとそう言ってやると、花は嬉しそうに俺に抱きついてくる。 チラリと涼子を見ると、涼子もまた嬉しそうな顔で俺と花を見ていた。 いつかまた、3人で暮らせる日が来るんだろうか? ふとそんなことを思った。 でもそれはきっと今じゃない。 こうした時間を大切にしながらゆっくりと育んだ先にそういう選択肢があれば、そのときに考えればいいのだ。 焦ることはない。もしそうならなかったとしても、別の生き方を選んだとしても、二人が幸せでいてくれればそれでいい。 「花、そろそろ降りて自分で歩きなさい」 ずっと俺の腕に抱かれたままの花に、涼子がそう声をかける。 「はぁい…」 残念そうに返事をしながら降りようとする花。 名残惜しい気持ちを抑えられなくて、俺はまたらしくもないことを口走ってしまう。 「あ……できれば、もう少しこうしててもいいか?」 「えっ?」 驚いたように目を丸くして、涼子が俺を見た。
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