第二章:過去

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ゴースト現象の恐ろしさは、現場を目の当たりにして初めてわかる。 予報、処理方法が既に確立されているにもかかわらずアインスがこの現象を一般人に隠すのはこのためだ。 予報が当たれば事前にツヴァイを配置し、住民には適当な理由をでっちあげて避難させるだけで済むが 今回のような事態が起きればまず間違いなく人口の100%が死滅する。All or Nothingなのだ。 そしてこの街は・・・ シュロは何もかも、心までもが白くなっていってしまうような死の街に背を向け、歩き出した。 「 そういえばあの時、他のゴーストが建物内に進入してこなかったのはなんでだろうな?」 看護車の中、イスカがくつろいだ姿勢でシュロに質問する。 建物内にいた男の子をヒソカとモクレンがあやし、シュロは怪我の手当てをしていた。 イスカの質問に、医者の診察を受けながら肩越しにシュロが答えた。 「 あの具現化していたゴーストが、建物の周りの存在の力を吸収し尽くしていたからだろう。  存在の力を吸い尽くすとゴーストはその場から動けなくなると考えればつじつまは合う。  力が吸い尽くされなくなった場所へ立ち入ることもできないんだろう。  3015年に起きた最初のゴースト事件でもそれを利用して鎮圧したんだろうな」 淡々と自説を説き、最後にやや沈鬱な調子でシュロは付け加えた。 「 ・・・つまり俺達はそんな程度の事もわからずにゴーストと闘っているんだな」 看護車が沈黙に包まれた。4人とも自分に課せられた任務の重さを今さらながら痛感した。
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