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目がくらんでいたのはほんの2、3秒だったろうか。
シュロが体を起こして見回すと、山の中にあるその街は何も変わることなくそこにあった。
21世紀初頭から続いた大災害は、交通網整備の急速な発展という皮肉な恩恵を人類にもたらしていたため
山奥のこの村にもしっかりとした建物、整備された道があった。
任務でなくここに来たならば、その白い建物が続く町並みを、美しいと思ったことだろう。
サイ・バスターの巨大な光柱が通り過ぎた後も、それらは変わる事なくそこにあった。
イスカの精神波を射出するこの銃は、対象の精神波を打ち消すための武器であるため、生体以外には全く影響を及ぼさないという便利な面があった。
もちろんシュロ達はこれに撃たれれば精神波を打ち消されダメージを受ける。そのために呼吸をあわせて退避、射出したのだった。
「 う・・・くそ。頭がズキズキする。
全部消し飛んだろうか」
イスカがその場に座り込み、まさに命の力燃え尽きた様子でつぶやいた。
最大出力でサイ・バスターを放ったためしばらく戦闘は無理だろう。
「 ・・・いや。本当に今回は特別のようだぜ」
道の向こう側でモクレンが体を起こすのが見える。
予感していた事だが、シュロも頭をめぐらしてその光景を目に入れた。
「 まだ来るぞ!」
イスカの銃で全て消し飛びはしたものの、ゴーストが沸き続ける現象は止まらなかった。
「 イスカを守るんだ!俺が前に出る」
シュロが跳ね起きて前方へ飛び出しながら指示を出した。
しばらくの間、銃を撃てないであろうイスカを守るため、モクレンがシュロとイスカの間で守り、シュロは最前線でゴーストを蹴散らし始めた。
彼の蹴り技には定評があったが、シュロの足はむしろすばやく体を移動させるのに秀でていた。
素早い体さばきでブレイブ・ナックルを振るい、正面のゴーストを次々と殴り倒していく。
「 うは~・・・さすがにすさまじいな」
シュロが全て倒してしまっているためにやる事がなくなってしまったモクレンが感嘆の声をあげた。
「 射撃専門の俺にもわかるよ。さすがにマーシャル・アーツで軍No.1だったお前の師匠をやるだけある。
まるっきり疾風だな」
イスカも座り込んだ姿勢のまま同意する。
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