喝采

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 "届いた報せには 黒い縁取りがあった" ?有名な昔の歌にそんなフレーズがありますが、21世紀には似たような事はあってもそこまでの喪失感を味わえる事などないでしょう。  なんの変哲もないお昼休みの事でした。2年前に別れた彼からの件名付きのメール。開く前から縁取り付きの報せだとわかっていました。病養の為に故郷へ帰り、もう疎遠になっていた彼からくる連絡はそれ以外あり得ませんでした。彼のお母様からの文章でお通夜お葬式の日時。一行目には、 『本来ならお手紙にてご連絡したいのですが、住所が全く残っておりませんでした。息子の遺言で貴女には必ず伝える様にとありましたので、失礼ながら最善の方法と思いメールでお知らせさせて頂きます』 と、ありました。その文章を見た瞬間あの曲が頭の中に流れたのですが、今時はきっと黒縁の手紙が届く事も少ないんだろうな、などとくだらない事ばかり考えてメールの内容は何度読んでも全く頭に入りませんでした。  私はそのまま仕事を早退しその喪失感と言うべきか、無気力と言うべきか、とにかくそんな物を抱きしめながら涙も流さずにひたすら眠る事だけに専念しました。とりたて彼の夢を見たり、寝る前に彼の事を思い出したりなんて事もなく、ひたすら寝よう寝ようと思い枕に顔を埋めただけです。家に入る直前にDMやチラシの溜まったポストを見て「これじゃぁ手紙で来ても気づかないじゃない」と一人で笑ってしまった程、涙はでませんでした。 彼との関係は半年程でした。別れた原因も特になく、綺麗な自然消滅でした。別れたあとに連絡をとってなかった訳ではないのですが、気付いたら恋人同士ではなくなっていました。
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