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 数日経っても来るべきものは来なかった。毎日期待する。今日が駄目ならきっと翌日には、翌日が音沙汰無しなら翌々日、翌々日も変化無しならその翌日……。待ち遠しいという気持ちより徐々に焦る気持ちが上回る。来ない、来るべきものが来ない……。日を追うことに私は極度の不安に襲われた。  そして週末、土曜日。期待していたものは来なかった。さすがに明日以降に期待、という段階を越えた。私は近所の薬局が開くのを待ち、ドアが開錠されるなり店内に入り検査薬を買った。急ぎ足でアパートに帰り説明書を読む。そしてトイレに入り、用を済ませた。待つこと一分。 「……?」  検査窓には薄く色が着いてるような、ただ検査薬が染みてるだけのような半透明な筋が1本。説明書と見比べても陽性なのか陰性なのか分からない。仮に陽性だとしたら……。 「とりあえず柴さんに……」  私は携帯を取り出して柴さんに電話を掛けた。柴さんはすぐに出た。私は話したいことがある、これから伺ってもいいかと尋ねると、いいよおいで、と返事をくれた。私は急いで支度をして柴さんちに向かった。柴さんちの最寄り駅でお手洗いに寄る、最終確認。でも何の変化も無かった。きっと妊娠している……。柴さんのマンションに向かって歩きながらこれからのことを考える。仕事は?、式は?、その前に産婦人科を受診しなくちゃ……。もうパニックになっていた。  マンションに着き、エントランスの自動ドアを解除してもらい中に入る。柴さんの部屋の前に行き、インターフォンを鳴らした。 .
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