3045人が本棚に入れています
本棚に追加
/398ページ
「どうしたの? 顔色悪いね」
「いえ……」
中に入りソファに掛ける。柴さんはコーヒーメーカーに粉をセットしスイッチを押した。私がパニックになってる理由を知らないからか、今日のニュースで芸能人が離婚した話をする。そしてコーヒーが出来上がると私の隣に座った。
「や……」
柴さんの手が私の背中を這うように伸び、私の腰に回る。ぐいと引き寄せて私の顔を覗き込むと唇を合わせた。
「……」
「どうしたの? 僕が欲しくなったの?」
「違……」
柴さんは強引に服の中に手を入れてきた。そんなことをしに来たんじゃない、私は柴さんの手首をぎゅうっと掴んで阻止した。
「違うんです、あの、私、生理が来なくて」
「そう」
「え?」
柴さんは手を緩めアッサリと頷いた。
「あの……」
「まあ、想定内のことだからね」
柴さんは驚く様子もなく再び手を服の中に入れようとした。
「あのっ」
「用意はある?」
「用意ですか?」
「ああ。用紙だよ」
用紙……。婚姻届を持って来たかということだろうか。
「ちゃんと署名も判も押すよ」
「え、でもご両親にもお会いしたことありませんし」
そう答えると柴さんは、両親?、と怪訝そうに返事をした。
.
最初のコメントを投稿しよう!