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「処置に両親はいらないよね?」
「処置……?」
「もしかして桧山さん勘違いしてる?」
そう言うと柴さんは笑い出した。処置、処置って?
「何か可笑しいですか……?」
「可笑しいも何も。まあ、結婚はするよ。傷物にしたんだからね」
「え?」
私は話が飲み込めないでいた。傷物も何も処女じゃなかったのは柴さんも気付いてる筈。
「用紙って同意書だよ、中絶の」
婚姻届だと思ったの?、桧山さんは可愛いね、と柴さんは笑う。
「し、柴さんは、中絶を前提に私を抱いたんですか?」
「そういう訳じゃない。勿論君が可愛いと前から思っていたし。結婚するなら桧山さんみたいな素直でおとなしい子が良かったからね。子供も結婚もまだ早い。桧山さんはまだ25でしょ? 僕もまだ縛られたくないし」
私は絶句した。早い?、縛られたくない??、そんな理由で中絶を選ぶの? 私は何も言えずに柴さんを見つめた。
「デキたなら、もっとシようよ。避妊無しで楽しみたいから」
「……」
信じられなかった、柴さんが、まさか身近にいる先輩がこんなことを考えてるなんて。柴さんは再び手を私の体に這わせる。私は身震いした。それは体が熱を帯びた訳じゃなく、柴さんの手が恐ろしく不気味に感じたから。私は柴さんの手首を再び掴んだ。
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