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私は鎌谷さんの胸で泣いた。しばらくしてアパートの別の住人の足音が聞こえて私は慌てて離れた。
「大丈夫か? 話聞くぞ。幼なじみんとこの店でいいか?」
「き、聞いてくれるんですか……?」
「聞くだけな」
「ありがとうございます。でも……」
カフェと言えど客や店員がいる。他人には聞かれたくない。話の内容は分からないだろうけど、妊娠や中絶という単語を聞かれれば想像は出来る。
「深刻そうだな……。うちじゃ母ちゃんも妹もいるし……カフェよりずっとタチ悪いしな」
「あ、あの、上がりませんか? ち、散らかってますけど」
鎌谷さんを見上げる。少し困ったような顔をした。
「いいのかよ。まあ別に何もしねえけど」
「はい……どうぞ」
私は鍵を開けて中に入った。鎌谷さんも玄関に入る。バスタオルを貸すとTシャツを脱ぎ、頭をガシガシと拭く。私は麦茶を入れようとキッチンに行く。
「ピーコも着替えろよ。お茶は後でいい」
「すみません……」
「覗かねーから早くしろ」
私はクローゼットから部屋着を取り出し浴室に入った。ユニットバスでシャワーは浴びずに化粧だけ落として着替える。鎌谷さんは、体を拭き終えたのか、上がるぞ、と言って部屋に入ったようだった。
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