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着替えてキッチンに行く。麦茶を注ぐ。鎌谷さんはクッションに座っていた。上半身は裸でバスタオルを肩に掛けて、着ていたシャツを手に持っている。
「シャツ、乾燥機に掛けますか?」
「ああ。頼むわ」
「……」
鎌谷さんのTシャツを預かり、洗面所で軽く洗ってから乾燥機に入れた。
「何があったんだ? 柴か?」
「はい……」
「喧嘩したのか」
「……」
「喧嘩ってレベルじゃないな」
部屋にいる鎌谷さんに話し掛けられた。首筋のキスマークを見られたから今更かもしれない。でも自分の口から、しました、なんて言いたくなかった。小雨だった筈の天気は本降りになったのか、窓から入る雨音が耳に付く。しばらく黙っていたけど、いつまでもそうしている訳にはいかない。私は乾燥機のスイッチを押して部屋に戻り、鎌谷さんの前に座る。顔を見れなくて俯いたまま言った。
「妊娠したかもしれなくて……」
鎌谷さんの麦茶を啜る音がした。
「で、柴は何て言ってるんだ?」
「責任は取る、って」
「結婚するのか……」
私はちらりと鎌谷を見た。鎌谷さんは私から目を逸らした。
「そ、それが」
「何だ」
「同意書にサイン捺印するからって……」
「って、はああ??」
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