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「私、産もうと思います」
「え? 僕の話、聞いてなかったの?」
「授かった命ですし、私、中絶なんて出来ません」
「随分道徳観があるんだね。でも僕はいらない。それとも君、何か企んでる?」
「え……」
「僕をゆするつもりなの? お金が欲しいの?」
「そんなものいりませんっ」
「大体、お腹の子は僕の子なの? 桧山さん鎌谷さんと付き合ってたよね? 本当は鎌谷さんの子じゃないの?」
「……」
私は絶句した。確かに鎌谷さんと付き合っていたけど鎌谷さんとはしていない。仮にそうだとしても私が鎌谷さんと付き合ってるのを知った上で避妊もせずに行為をしたんだから柴さんにも責任はあるのに。
「どっちの子か分からないのに産むのもね。今回は諦めたら?」
隣に掛けていた柴さんは私ににじり寄る。私の腰に手を回し動けないように押さえ込むともう片方の手で私のスカートの中に手を入れた。
「やめてくださいっ」
「抵抗されるのも萌えるね」
話し合おうと思った私が甘かった。柴さんは力ずくで下着に指を這わせる。こんな人の赤ちゃんなんて……。産みたくない、こんな気持ちで産んで赤ちゃんは幸せだろうか。赤ちゃんは嬉しいだろうか。でも命は命だ。
「濡れてるよ。ん……あれ?」
「え?」
柴さんが指の動きを止めた。何と無く下着に違和感を覚える。
「あ……お手洗い借ります!」
私は立ち上がりトイレに向かった。鍵を掛けて下着を下ろす。
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