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 柴さんちからの帰り道、私は鎌谷さんに電話をした。でも留守電に繋がるだけで鎌谷さんは電話には出なかった。仕方なく携帯にメールを送る。生理が来たこと、騒がせたことわ詫びる内容。返信を待ちながら電車に揺られる。  正直、私はホッとした。妊娠してなくて良かったって。結婚も出産もいずれはしたいとは思うけど、実際に選択を迫られてパニックになっていた。柴さんがあんな酷い人だと知らなかったとは言え軽率に体の関係を持ってしまったこと、妊娠したら生めばいいって軽く考えていたこと……。自分が酷くコドモに思えて情けなくなった。いい大人が何をしてるんだろう。もし妊娠して一人で産んで育てたとして赤ちゃんに何て言うつもりだったんだろう。  もし許されるなら、産むときは赤ちゃんに堂々としていたい。生まれるべくして生まれたんだって。 『中絶のせいとか元々の体質とかで妊娠出来なかったらどうすんだよ、お前だって子供欲しいだろ?、産むつもりでいたんだからよ』 「……」  ホッとした半面、私は少し不安になった。もしかしたら不妊症なんじゃないかって。漠然と結婚したら赤ちゃんを産んで育てて家庭を作ると思っていた。もし赤ちゃんが出来なかったらどうしようって。それは嫌だと感じる自分を勝手だと嫌悪した。赤ちゃんが欲しい訳でもなく柴さんと行為をして生理が来ないと右往左往して。 .
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