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 カフェに着きドアを開けると店員に奥のテラスへ案内された。鎌谷さんの指定席。 「おう」 「こんにちは」 「柴と話したか?」 「はい……」  店員が水を運んでくる。私はアイスコーヒーを頼んだ。 「で」 「はい……。実は来るものが来て、結局は何も無かったんですけど」 「ったく。人騒がせな」 「すみません……」  鎌谷さんは手元にあったマグを啜った。 「まあ、良かったな。産むにしても忙しくなるからな」 「……」  他人行儀な言い方に胸がチクリとした。自分が蒔いた種とは言え、怒って欲しかった。 「あの……」 「何だピーコ」 「怒らないんですか?」 「はあ? だって話し合ったんだろ柴と」 「そうじゃなくて」 「昨日俺の言った通り、産む方向で柴と話し合ったんだろ?」 .
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