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病室を出た四人は、思叶の担当医である治川療子(はるかわりょうこ)と立ち話をしていた。
話題は、世間を賑わせているあの話題。
今も病室のロビーに置いてあるテレビで報道されている、『魔術に対する恐怖心』である。
「総理の不信任案が近々可決されるらしいね」
療子がそんな事を言った。すると、『七雄』であるためにそのような話題は嫌でも知らなければならない雄人が言う。
「時期総理として名が挙がってるのは反魔術派の政治家らしいっすね。たぶん、そいつが総理になったら魔術に対する法整理をするでしょう。そうなれば、俺たちは下手すると魔術使用を禁じられる」
以前、聖ゴスペル魔術学院にて行われた生徒会総選挙――異種格闘技大会『ジェネラルイレクション』。
その『ジェネラルイレクション』は生徒会役員を決めるというものであったが、また別の側面があった。それは、『魔術の大衆認知』というもので内容自体国営放送で全国民に配信され、大会には多くの政府関係者を呼び入れた。
しかし、『魔術の大衆認知』という目的ではあったが、実際大衆が抱いた感情は魔術に対する恐怖であった。
それにより、反魔術派の気運が高まり、魔術を厳格に規制しなければならないという輩多く見受けられたのだ。
そこで反魔術派の政治家が中心になり、政権交代の兆しが高まり、とうとう現総理大臣に対する内閣不信任決議がなされたのである。不信任案は近々可決されるらしい。
「魔術が規制されるとなると私の得意分野がかなり狭められてしまう。不信任案が可決される前に思叶ちゃんの治療を終わらせないとね」
思叶の傷は魔術なしでは完治できないひどいもの。
もし、その治療が終わる前に魔術の規制が行われては元も子もない。
「先生お願いします」
作間がそう言った。すると、他の三人も彼につられて頭を下げ、「お願いします」と言った。
「まっかせなさい。一二〇%全力を出して治療させてもらうわ。だから心配しなさんな。明日は思いっきり文化祭を楽しむといいわ」
「ありがとうございます」
四人がそう言った。
「それでは、俺たちはこの辺で」
作間がそう言った。
「明日の準備もあるしね」
愛姫葉が続いてそう言った。
「うん、思叶ちゃんの事は安心して」
療子はそう言うと、「じゃあね」と手を振った。
四人はそんな療子を背に病院を立ち去った。
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