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青空に花火が打ち上げられた。
聖ゴスペル魔術学院、文化祭が盛大に開幕する合図である。
まだ午前中だというのに学院内は大勢の人で溢れ返っていた。学院の生徒は当たり前。他校の生徒に、一般客。バラエティに富んだ客層である。
一様、世間では反魔術がささやかれてはいるものの、この文化祭での集客数は去年とさほど変わりはないらしい。祭りと聞くと行かなければならない、という使命感に陥るニホン人だからだろう。
ここにもまた祭り大好きニホン人がいる。
「そういや、雄人はどこ行った?」
リンゴ飴を片手に作間がそう言った。
すると、一緒に行動している音羽が答える。
「生徒会の仕事だよ」
「あ、そうか」
当たり前ではあるが、文化祭となれば生徒会はあちらこちらえんやわんやと大変である。雄人は生徒会役員として、仕事へ行っているらしい。
「ねえねえ」
作間の隣にいた愛姫葉が彼の袖を引っ張る。
「私たちの公演っていつから?」
「確か……昼からじゃあ……」
「うん。昼からだよ。確か、二時に公演だから一時間前に集合って」
音羽がそんな事を言った。
「今何時だ?」
「一〇時」
「じゃあ、あと二時間見て回れるな」
「どこいこっか?」
愛姫葉が二人に尋ねる。
「俺は別にどこでもいいが」
「私も」
作間と音羽はそう言った。
「……、」
聞いた意味ないじゃん、と愛姫葉内心で思った。
仕方ないので、彼女は打開案を出す。
「じゃあ、二年の模擬店回ろうか」
「そうだな」
作間がそう言い、音羽が頷く。
三人は二年生の教室がある校舎へ向かった。
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