エヴィルイン

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その時、突然の出来事だった。 俺の死角から、何かが飛び出してきて俺の横腹に体当たりをぶちかました。 道を挟む建物の壁に寄りかかるようにしながら進んでいた所為だ。 建物と建物の隙間が死角となって見えておらず、ちょうど差し掛かった瞬間だったのだ。 平時ならば受け止めることもできただろう。 だが、今の俺にはそれすらできない。 力を咥えられた方向にそのまま倒れ、頭をしたたかに打ち据える。 何かが俺の体に伸し掛かっている。 もぞもぞと、それが動き出した。 ぐぇっ、何も入ってない腹を思いっきり押しつぶされる。 俺の体の上を張ってきたそれの顔が、視界の端からログインしてくる。 「助けて」 「……あん?」 それは白い髪を垂らしたどこか人形めいて生気を感じない少女だった。 推定十代、かざりっけの無い白いワンピースを着ていて、何故かスリッパを履いていた。 大人としては何を言っているんだこのガキはまず謝らんかい、と親の教育に文句をつけてやりたくなる。 だが。 早朝に似つかわしくない、間隔の狭い複数の足音を聞いた瞬間に彼女の言葉を理解した。 近づいてくる。 「追われてるのか?」 俺は少女を抱いて体を起こし、尋ねる。 こくりと彼女が頷く。 体に蓄えられた残りわずかなエネルギーが一気に燃焼を始める。
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