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「きゃぁっはっはっはぁぁ」
甲高く豪快な笑い声が部屋に響き渡る。
教会のように、音がよく反射する部屋の作りのせいかもしれないが、耳障りな女の声に不快感が募る。
舌打ちをしてみるが、笑い声にかき消され女に俺の不快感が伝わることはなかった。
仕方なく、女の背中に向けて負けじと声を張り上げる。
「おい、うるせーぞ。下品な笑い方してんじゃねーよ」
かなり声を張ったが、聞こえただろうか。
笑い声が止まった。
しばしの静寂の間。
どのくらいそうしていただろうか、俺は女の背中から目を離せずにいた。
女の腰まである銀色の髪が揺れたかと思うと、ゆっくりとこちらを振り向き、銀色の瞳が俺を捉える。
「なにか……言った?」
「言ってません」
即答してしまった。
それくらい威圧感のある目だった。
「まぁいいわ。それより、今からのことを考えると……あぁ、ゾクゾクしちゃう!」
先ほどの殺気はどこへやら、それどころか頬を朱に染めながら自分で自分の肩を抱いている様は、最早変態以外の何者でもない。
「やっと、やっとあの方に会えるのよ!きっと私たちは愛し合うわ。なのにこの気持ち、抑えることができましょうか!」
その自信はどこから来るのか疑問ではあるが、こいつの異常なまでの「あの方」への執着心、ある意味俺も似たようなものかもしれない。
とにかくこれで準備は整った。
後は実行あるのみ。
「ふ、ふふ、ふはは、ふははははははは!」
「きゃはっ、きゃはははははははははは!」
しばらくの間、その部屋から笑い声が途絶えることはなかった。
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