―抜け殻の部屋―

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――…ひどい、 ――だれがこんな……… ばらばら。 くびなし。 くびなし。 あしなし。 うでなし。 ばらばら。 くびなし。 くびなし。 くびなし首なしくびなし…………… ――…くびがないこが、おおい。 そして、もう一つ。 「………胸に、……穴…?」 皆が皆胸の中心、左寄りに握り拳大の空洞がある。 欠けた“部位”には差があれど、どの娘も皆一様に、同じ場所に《穴》を穿たれていた。 「………?」 吐き気と胸の痛みとに耐えつつ、今居る場所に改めて視線を巡らせた彼女は気付く。 違和感に。 今一度室内にぐるりと視線を巡らし、その違和感の《元》へと目を留める。 (……あの子…、“さっき”、あそこにいた………?) 円柱状の室内、その一角、折り重なる少女達からひとり離れて。 腰から下の無い少女の屍が、壁に手を差し延べたままで横たわっていた。 忙しない胸の鼓動を宥めつつ、そっと近付く。 そして恐る恐る覗き込み、ぎくりと固まった。 背筋を震わす。 ………きっと自分の顔は、今蒼い。 (……記憶…、違い………?) 横たわる少女の指先、人差し指にだけ塗られたマニキュア。 小さく艶やかな紅い薔薇に、彼女は確かに覚えがあった。 混乱しかけていたが、確かに視覚は捉えていたのだ。 “初めて”少女達の死体の山を“見た”時、―――この薔薇を。 (…さっきは確かに……、…あの辺りに………。) 彼女が目覚めた最初の時と変わらず、そこにある屍の山にそろそろと視線をやり、また戻す。 目の前の、屍である筈の少女を穴が開きそうな程に注視してから、ごくりと唾を飲み込み視線を上げる。 壁に触れる少女の指先。 そこから壁面の上へと伸びる、細い、紅い帯の先。 《 ニ ゲ テ 》 .
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