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セミが鳴く季節になった。高校にあがって7ヶ月がたった。部活は射的。
今日は部活がなく一人でとぼとぼ歩いていた。
家までの距離が果てしなく遠く感じた。
人生もこんなに長いのかなとしみじみ思っていた。
背中に強い衝撃が来るまで…
「っつてな…何だよ?」
「何って…。人生かったるそうな歩き方してたんだもん、お前」
「ああそう。意識はしてないんだけどね」
小学のころから(まあ一応)仲良くしてる吹矢数真(ふきやかずま)。
初めて会った時からずっと妙に馴れ馴れしい奴でもある。
金髪に染めてる上にピアスを付けて、いかにもチャラい奴。でも本人曰く、好奇心でチャラくしてるらしい。
ま、どうでもいいけど。
数馬は空を見上げ、息を天に吐いた。そして、独り言のように呟いた。
「俺、今思った」
「は?何を?」
空を見る目線をそらさずに言葉を発した。
「今日の空は今日しか見れない。時間だって同じ。何度も同じことしてたらつまんないだろ?きっと空とか時間もそう思ってるから毎日違うんだよな…」
「さあ、どうだかね…」
今日の空は今日しか見れない…
今日の時間は今日しか過ごせない…
心に深く…刻まれた気がした。
数馬は見た目に合わず、思うことが詩人っぽい。
みんなと違う目線だけでなく、みんなが普段何気なく見てる所を言葉に表して感じてるんだ…。
そう広く感じられる人って羨ましいな…。
そういうとこだけ、数馬を尊敬してしまう。
「なあ!!」
「??!……何だよいきなり…」
夏の太陽がとても似合う笑顔で、こちらを見ていた。
「頑張れよ!!」
「……何を?」
笑顔のまま、数馬は何も言わなかった。
――今の時間は二度と現れない…。
そう心の中で、かすかに感じた。
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