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飲み物を注文する際に悠月が
「…そんなデカイ体で、ジュースだけ?」
と聞くと、店員の口元が震えた。
丈は何かを言おうとはしたが一旦諦め、
「…少食だから。」と呟いた。
二人が考える理想は、非常に似通っていた。
丈は幼いころからピアノを習っており、他にもギターをたしなむ程度に弾くと言った。
悠月は、楽器は何もできないが、歌が好きだと言う。
悠月は手や声色、表情を巧みに使い話す。彼の存在力は強大だった。
音楽の他にも、プライベート的な内容の会話も交わした。
悠月の家は学校から少し遠く、隣の学区だそうだ。
丈達の通う高校は特別に悠月の住む学区の生徒を数人受け入れている、その隙間に入り込んだそうだ。
特別この高校に魅力的なポイントなど無い、選んだ理由を聞いても「なんとなく。」とヘラヘラ笑った。
丈の実家も高校からは少し距離のある所だったが、彼は高校入学時にマンションで独り暮らしを始めていた。
この話だけで木河家の財力を薄っすら感じ取ったのか、「…いいなぁー」と羨望の眼差しを送る。
実際のところ丈自身は実家から通うつもりであった、
家を用意したのも生活費を送ることを勝手に決めたのも全て親である。
しかしそれを受け入れたのは紛れも無い、丈なのだが。
だが全部甘えていてもいけないと、学業と楽曲作成の傍らアルバイトに勤しんだ。
話の途中から、丈の意識は話題から遠ざかる。
目の前にいる少年の存在が不思議で仕方なくなり始めたのだった。
色で例えるなら、存在はカラフルだった、虹色だった。
それは毎秒キラキラと移り変わる。
薄っすらと残る自我が、「これは凄い人間と出逢ったな…」と頷く。
悠月は異常なほど明るい性格で、厚い唇からは興味深い話が次々と飛び出す。
それと同時に悠月は丈の知識に感心した。
真剣に見つめてくる瞳を、見つめ返すことなどできない。
一瞬でとりつかれそうな気がしたのだ。
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