第二話

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一見で悟られないように隠しているが、丈もこの状況を楽しんでいた。 この家に客人が来ること自体、初めてかもしれない。 普段は安らぐために人と付き合わないようにしていたが、人といて落ち着いた気分でいる。 何でも見透かしたように大人ぶっていたが自分が、声を荒げたり、今度は痙攣寸前まで笑い転げている。 そうさせたのは、悠月に他ならない。 不思議な男だ。 悠月は単純に構成されているようで、全く掴めない。 また、悠月の顔は整っていて女性的だが、物腰は一切ひ弱い感じはしない、むしろ芯が通って男らしいとも言える。 息を整えつつある悠月の頭を鷲掴みにしてみる。 一瞬小さな身体が飛び跳ねた。 これは実験だった、 2回程見た解せない動揺の謎を解きたかった。 動きを封じれば力一杯抵抗するだろうか。 しかし期待は外れた。 悠月は静かに、諦めたようにソファに無言で収まり続けたのだった。 更にそのまま「…今何時?」と丈に問うた。 時刻を告げると、のんびりと重い掌をくぐり抜け立ち上がる。 窓の外はすっかり夜だった。 「あー…ごめん、帰らなくちゃ。」 言いながらコートを着込みだす。 玄関まで送り出すが、その廊下がいつもより短く思う。 別れを惜しんでいるのか、そんな自分が馬鹿らしくなるが、丈は確かに物寂しさを覚えていた。 今日も言いたい、明日会えるかを聞きたかった。 靴を履き終えて振り返った悠月は微笑むと、「んじゃ、お邪魔しました。」と首を少し右に傾けた。 男がするには気味が悪いおどけ方だが、悠月には可愛らしい演出に見える。 細い指がドアノブに添えられた、と同時に丈が悠月の左腕を引く。 そのままの勢いで頭を掴んで、丈は被さるように唇を塞いだ。 実験ではない、衝動だった。
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