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悠月の住所は、立派な家の並ぶ住宅街へと丈を導いた。
悠月は丈を「金持ち」と言ったが、もしかすると悠月こそ相当な家柄なのかもしれない。
そう思うとあの存在感は優雅な暮らしからきているのか、などと妄想も進む。
そして漢字とローマ字で「沙田 MASUDA」と書かれた表札を見つけた。
他の家とは少し異なる外観をしている、
アメリカンというよりヨーロピアンと表現する方が正しいような、暖色の家だった。
整えられた庭が柵の外からも見える。
呼吸を整えインターホンを押すと、聞こえてきたのは男の声だった。
悠月とは全く違う。
間を置いてから高校の同級生だと告げると、男も間を置いてから「ちょっと待って」と言った。
玄関扉が開くと、出てきたのは金髪の青年だった。
爽やかに「どうぞ、こっち。」と丈を案内する。
悠月よりも背は高い、そして瞳はこげ茶色だった。
顔立ちも体格もしっかりしていて男らしいが、悠月に似ていた。
青年が「悠月の兄です」と言うと、辻褄がやっと合う。
物腰が柔らかく、丁寧な人間だ。おそらく大学生くらいであろう。ハーフだからか年齢よりは少しばかり大人びて見える。
大きな扉を閉めると、青年は丈を何故か玄関先に座らせた。
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