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「あのね、…君名前は?」
「木河丈です。」
「丈君ね。俺は悠月の兄のハルです。……あのさ、いきなりで申し訳ないんだけど、少しお話してもいいかな?」
「はい。何でしょう?」
陽も丈の横に腰掛けると、じっと丈を見つめた。
同じような顔をしているが、雰囲気は微妙に異なる。
「丈君は、悠月と一緒の大学に行くっていう子?」
「そうです。」
「そっか。ずっと高校で友達だったの?名前とか君の話は今まで全然聞かなかったからさ」
「いえ、ついこの間知り合って…」
「へー、そう。…ちなみにさ、プライベートに立ち入るかもしれないけど、弟のこと色目で見てるとか、無いよね?」
「………ない、です。」
一瞬答えが遅れた。
完全に否定はできないから、嘘をついたことになる。
「…あ~そうか、そうかそうか。」
「…何で、そんなこと聞くんですか?」
今度は丈が陽を見つめ返す。
背の高い丈は勿論座高も高い。
上からじっくり陽を見つめると、観念したかのように、兄は目線から逃げた。
「ごめんね、気を悪くさせたと思う。あいつあんな見た目だから、そういう目で見る奴も少なくないんだよ。
正直昨日今日知り合った男が家に押しかけてくるなんて、何かあるのかな~っと疑っちゃった訳です。」
眉毛を下げて、でも場を和ませようと笑顔は崩さず、陽は頭を下げた。
ここでもし、丈が「色目で見てます。襲いに行きます」とでも言った場合、兄はどうするつもりだったのだろう。
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