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子供部屋は広く、ベッドが両端に一つずつ置いてあった。
右側の布団は膨らんでおり、髪の毛が覗いていた。
机が正面に二つ並べられており、あとは本棚がいくつかあった。それらには家族の写真が多く飾られてある。西日が反射してよく見えないので、近づこうとする。
「ハル兄?」
声がする方を振り返ると、悠月が丈の姿を見て止まっていた。
兄と間違えたらしいが、目の前に居たのはそれより二回りは大きな男だった。
必死で笑顔を作る悠月に胸が痛む。
昨日どんな表情で帰ったんだろうか、見なくともわかるのに。
丈はコートを部屋の隅に置き、枕元近くに進むと、そのまま床に座った。
顔の高さがほぼ同じになる。
どうして来たのか悠月は尋ねたが、それは聞き流した。
「悠月、」
「何?」
「ごめん、」
「えっ」
「…ごめん、色々。」
枕元に少し額を置き、項垂れる。
「嫌なら嫌って、言えよ。」
「何が。」
「触れられるの。まぁ…キスは普通嫌だろうけど。」
「…嫌っつーか、迷ったけど、…でも、丈は、…何かほら、違うだろ。普通じゃねーから。」
「…はぁ?」
「不思議だから、ちょっと興味があったんだよ。昨日は、びっくりしたけど。」
「…申し訳ない。」
「だから丈のことが嫌ってわけじゃ、ねーんだ。」
蒼い目が、やっと丈の瞳を捉えた。
まだ動揺の色がうかがえる。
「なぁ、丈って、…ゲイなの?」
悠月がじっと見つめながらつぶやいた。
思わず吹き出しそうになるが、なんとか堪える。
「いや違うけど……そうかもしれない。」
俯いたまま言うと、悠月はベッドの上に飛び起きた。
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