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丈はもう顔を上げることもできずに震え上がりそうな身体を必死で固めていた。
しかしここまで来て弁解の余地も無い。
諦めたように、話を続けた。
「よくわかんねーけど……何か、…」
「丈、だってお前、彼女居るじゃん。」
「別れた、昨日すぐ。」
「はぁっ!?」
ちらっと見上げると、悠月は顔を真っ赤にして布団を掴んでいた。
「何だそれ…ちょ、ええぇ…」
「悠月、お前のそばに居るためには、どうしたらいい」
「ええええ?」
「一緒に居たい、だけじゃない。お前が欲しい。」
「ちょっと待て、お前何言ってんだ…」
泣きそうな顔をしている悠月が見えた。
何も考えることのできない頭の代わりに丈の大きな身体が悠月を抱き締めた。
その瞬間また悠月の体は強張った。
だが暴れようにも逃げない位強くしていたので、途中で「苦しいんですけど…」と悠月が唸るまで沈黙は続いた。
緩んだ腕の中から、彼は逃げ出さなかった。
俯いたまま静かに、何かを考えているようだった。
間が持たないので、丈が今度は優しく包み込む。
悠月は細身で女性のような柔らかさなんてものはないが、それでも暖かかった。
それに離れると丈自身困った顔を見られる羽目になる。
それだけは避けたかった。
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