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「丈、」
悠月が腕を動かし、掌を丈の背中に置いた。
「俺の話を聞いてほしい。」
「うん…」
「俺は、もう気づいてると思うけど、人と深い付き合いをしたり、触れたりするのが苦手なんだ。
出会って三日くらいでしかも男の丈をすぐに愛せるかって聞かれたら、難しいと思うんだよ。」
「…そりゃそうだ。」
「でも、お前は、何か、普通じゃない、不思議だ。だから……」
「…うん」
「男女関係なく久々に打ち解けれたのがお前だし、昨日も、俺すごい、楽しかったし、安心しきってたから、自然と。」
「そうか…」
「だから、あの…お前のものになってみるのも、有りかもしれない………ただ、」
「後悔するよ。」
紅潮した顔で、見上げてくる。
また悠月の瞳が語りかけてくる。「どうせすぐ終わる気まぐれなんだから、辞めるなら今のうちだよ。」と、強い調子だ。
遊びなら結構、その方が気が楽だろう、と返事を返したつもりだが、悠月は瞬きと一緒にそれらを跳ね返したようだった。
悔しくて無理やり二度目の口付けをすると、腰に思い切り蹴りが入る。
苦しむ丈の姿を見て悠月はいつも通り、
いや、吹っ切れたようにいつもより意地悪そうに笑った。
子供じみた契約だった。
それでもそんな、言葉だけのつながりが、
どうしようもなく固く、永遠のものに感じられる。
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