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2学期の終業式の日、悠月は登校ルートから少し外れて、まず丈のマンションへと向かった。
街中のポスターではクリスマスのイベントが告知されている。
そういえば悠月を初めて見た時、彼の背中をイルミネーションが照らしていた。
恋人が居ない人間は寂しい時間を過ごすのだろう。
だが新しい恋人が同性の彼らもまた少し戸惑っていた。
手を繋ぎ、人混みに揉まれながら夜景を見る、なんてドラマチックなことは起こりうるのだろうか。
数日前に二人が交わした会話の中では、これらは全面否定された。
そもそもそんな寒々しい展開には鳥肌は立つし吐き気さえするよ、
と、まず悠月が言う。
世の中の人間は頭の中が本当に幸せみたいだね~と付け加えて。
校舎に近づくと、景色が少し違っていた。
白い建物に、派手な橙色の大きな垂れ幕が飾られてある。
そこにはこれもまた大きな字で
「陸上部 嵐川 健(3年) 世界記録樹立」
とあった。
文字を発見した生徒達はざわめきながら校門をくぐる。
悠月と丈は顔を見合わせると首をかしげ、「誰?」と困った顔をした。
丈は相変わらず教室に引きこもりがちで、悠月は社交辞令的な付き合いしかしないために、顔は広いようで狭い。
その一方当人たちが思うよりずっと多くの人に、彼らは知られてはいる。
理由はただとてつもなく目立っているからだ。
とにかく二人以外の生徒は概ねこの「嵐川」という生徒を知っているような反応をしている。
「ウチの学校凄かったんだなぁー」
脂肪の少ない身体を震わせながら、悠月がまるで他人事のように呟く。
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