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次に彼らに出会ったのが、翌日のことだった。
悠月がいつも通り丈の家を訪れたところ、同じマンションの、丈の部屋よりも上の階に来るように指示された。
悠月がその部屋に向かうと、出てきたのは「堀部 潤」という派手な銀色の青年だった。
潤は悠月の顔を見ると中へ向かって「おーい丈君、奥さん来たよー!」と叫ぶ。
あまり物事を深く考えない部類の人間なのだろう。
悠月は手持ちのカバンで潤の頭を張り倒し、苦しむ姿を横目に廊下を進んだ。
部屋割りはどうやら上階になるにつれ良くなるらしい。
4LDKものスペースがあるにも関わらず、住んでいるのは健と潤の二人らしい。
いや、むしろスペースよりも悠月が気になったのが、何故今この空間にこの四人が集まっているかということだった。
説明を買って出たのは潤である。
最初に見たときからだが、ずっとサングラスを掛けたままだ。
「あぁ、それはさ、今朝俺がゴミ出ししてたら見たことあるでっかい奴が居るからよ、声掛けたら丈だったってわけだ。」
「…サングラス外さないの?」
潤の大きな瞳がレンズ越しに悠月を捉える。きっと眼鏡を外すと長く豊かな睫毛が際立ち、美人だろう。
ニコリと笑った後にフレームは持ち上げられた。
目の周りは黒い化粧が施されていた。
そして、「これ度入りだから、外したらアンタの顔も見えないの。」と言う。
「そうだ、…そうだ、何でこの人俺のこと『奥さん』って…おい丈なんか言ったのか。」
丁度四人が座れるテーブルに、健がコーヒーをセットする。
そんな動作の傍ら顔を上げて答えた。
「俺たちが聞いたんだよ。同類の匂いがしたからね。」
「ちょっ……」
「ごめん。」
顔を掌で覆い、丈は肩を落とす。
だが悠月も、この二人組みに詰め寄られて吐き出せないことは無いな、とため息をついた。
バレてしまったことは仕方ない、
元々隠してもいないことだ。
誰かに知られることでこの関係が「事実」になってしまったように思う。
今までも事実だが、より鮮明なものだ。
そして健が言った「同類」とは、関係のことを指すのは明らかだった。
「で、どこまでやったの?」
嬉しそうに潤が詰め寄るが、健が後ろから「馬鹿、女子かお前」と頭を叩く。
どこまでも何も、と、悠月と丈は困りながら見つめあい、返事をしないでいた。
するとまた健が様子を見て「ほら、新婚さんだからね、彼らは。」と潤を諭す。
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