日常から非日常へ

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――― 学校が終わると共に、俺は西田匠の自宅に直行した。 匠は早くに両親を亡くしており、今は両親の実家から送られてくる仕送りとバイトで生計を立てているのだとか。 匠宅は築三十年という、随分と時代を感じさせるアパートである。 室内はうだるような熱気に支配されていて、回っている扇風機も効きが悪い。 うちわで涼を確保しつつ、今朝届いた段ボールの中身を見せてもらった。 まず段ボールを開けて目につくのは、やはり緩衝材に包まれた黒のヘッドギアだろう。 次に説明書のような冊子が入っていて、これには読まれたような痕があったから、おそらく匠が読んだに違いない。 読み始める前から心が折れそうになる程分厚い説明書を手に取り、適当にページを開いた。  
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