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痛みに顔を歪ませながら帰宅しようとする最中、見覚えのある少女が前を歩いているのに気付いた――――矢城恋だ。
まぁ特に回避する理由もない俺はちょっと小走りして恋の横に並んでみる。
「うっすー。そっちも学校終わりってとこ?」
「ん?ああ、なんだ玲王か――――って、うわっ!?どうしたのよその顔!?」
え、マジでそんなに酷い?
「そりゃあ顔にアザ作って口から血を垂らしてたら誰だってびっくりするわよ」
恋に指摘されて唇を拭ってみると、確かに手の甲には血が付着していた。
顔を青くする俺を見た恋は苦笑して、
「ま、あなたのことだから、誰かの為なんだろうけど」
その発言に俺は目を丸くする。
「よく分かったな。誰かの為だなんてさ」
「そりゃ分かるわよ。十年以上も一緒にいたんだから」
恋は何を今更、と言った。
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