ある日常の出来事

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  「あ、玲王。ちょっと待ちなさい」 母さんは何かに気付いたように、はっとなって奧に入って行った。 どした、と首を傾げていると、のれんの先から母さんが何かを握りしめて出てきた。 あれは……お守り? 「はい、お守り」 「……まぁたそんなモン引っ張り出してきて」 と言いながらも、差し出されたお守りを受け取る。 「何かあったら誰かを頼るのよ。あなたの周りには素敵な友達がいるんだから」 「……」 そのお守りは赤く、手作りだった。 それをポケットに入れて、 「……俺、あいつらを守れるかな?」 突然の弱気な発言に、母さんは少し目を見開いたが、それからにっこりと微笑んで、 「大丈夫よ。なんたって玲王は父さんと母さんの子だもん」 まったく具体的ではないが、その言葉には妙な説得力があった。 「……行ってくるよ」 俺も笑みを返し、今度こそ扉を開いた。 見えた空は、夕陽が赤く赤く染め上げ、その鮮やかな色はお守りの色とだぶって見えた。 ――――
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