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必要最低限のことしか俺達は話さない。
沈黙から解放されたいのが本心なのだが、恋が『登山中は喋らない方がいいわ。ばてちゃうから』と言ったため、閉口するしかない。
疲労困憊な俺と匠だが、恋だけはへらへらしている。
それが若さゆえなのか、何かスキルを使っているのかは分からないが……。
良いなぁ、とか思いつつ、重い足を着々と動かす。
すると、恋がいきなり背中に差してあった木製の杖を引き抜いた。
「構えて!敵よ!」
その言葉を合図に、俺達は気を引き締めた。
俺は【草薙の剣】を。
匠は【魔導銃】を。
傾斜の厳しい前方に向け、注意を注ぐ。
微かにだが、地響きのようなものを感じる。
それが時間が経つにつれて、確実に大きくなっていく。
「来るぞっ!」
迫り来る何かに怯える自分を奮い立たせるため、声を必要以上に張り上げた。
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