クエスト

9/26
前へ
/107ページ
次へ
  必要最低限のことしか俺達は話さない。 沈黙から解放されたいのが本心なのだが、恋が『登山中は喋らない方がいいわ。ばてちゃうから』と言ったため、閉口するしかない。 疲労困憊な俺と匠だが、恋だけはへらへらしている。 それが若さゆえなのか、何かスキルを使っているのかは分からないが……。 良いなぁ、とか思いつつ、重い足を着々と動かす。 すると、恋がいきなり背中に差してあった木製の杖を引き抜いた。 「構えて!敵よ!」 その言葉を合図に、俺達は気を引き締めた。 俺は【草薙の剣】を。 匠は【魔導銃】を。 傾斜の厳しい前方に向け、注意を注ぐ。 微かにだが、地響きのようなものを感じる。 それが時間が経つにつれて、確実に大きくなっていく。 「来るぞっ!」 迫り来る何かに怯える自分を奮い立たせるため、声を必要以上に張り上げた。  
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!

111人が本棚に入れています
本棚に追加