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「恋。これって何か分かるか?」
妙に煤けた本を渡し、それを恋は興味深く眺める。
「噂通り、データみたいね。私達からすれば、何の価値もないわ」
あっさりとそんなことを言わんでくれ。どんだけ辛い思いをして歩いたと思ってんだよ。
「というわけではい。これは匠の戦利品よ」
「あざーっす」
「……」
今は匠が憎い。これが漁夫の利ってやつか?
憎々しげに古ぼけた本を睨み付けていると、ツンツンと肩をつつかれた。
「クエストはクリアしたから、あと数分で帰還できるはずよ。テンパらないようにね」
またワープ系か?あれは脳みそをシェイクされた感覚に陥るから、下手すりゃ嘔吐すんぞ。いやマジで。
瞬間。
いきなり体が宙に浮く感覚を得た。
これは…………ワープ?
見れば恋と匠も体が光となって消えそうだ。
消える前に一言。
「恋の嘘つきィいいいいいいッ!」
何があと数分だ。あと数秒じゃねぇか。
無事に帰還したら、一度お灸を据えにゃならんな。
そのまま気管から何かが込み上げるのを感じ、ワープした。
――――
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