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数時間前、少女はアルバイト先で閉店の片付けをしていた。店内には少女と店長と思われる中年の男がいた。
「繭ちゃん、そこ片付けたらあがっていいよ」
繭と呼ばれた少女は、無言でうなづくと片付けを続けた。胸には佐藤繭と書かれた名札が下がっている。
繭は片付けを終えると「お疲れ様でした」とだけ言って店の奥にある更衣室へ入っていった。
「はぁ」
一日の疲れか繭はため息をついた。着替えようとロッカーに手を伸ばそうとすると、更衣室のドアを開ける音がした。
(店長が入ってきた)
店の更衣室は一つしかなく、女性が使うロッカーの方がカーテンで仕切られた形になっている。
「繭ちゃんまだいる?」カーテンに店長のシルエットが映っていて、カーテンのすぐ側に立っているのがわかった。
「はい、います」
繭が答えると店長は黙ったままでシルエットだけが消えた。正確には更衣室の電気が消えていた。
「店長!」
繭は暗闇に向かって声を出したが返事は返ってこない。恐くなってカーテンへ近づくと後ろからいきなり口を手で抑えられた。
「ん…」
繭は声をあげようとするがしゃべることが出来なかった。
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