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第1項 始まり
朝から降り続く雨は、せっかくの修学旅行だと言うのに気分を暗くする。
亮太は、何かに付けてめんどくさがる性格で、当然この雨のせいですでに行きたくなくなっていた。
そんな性格を見抜いている佳奈は、すでに玄関で待っていた。
「ねえー!いつまで待たせんのよ!早くしてよトロイなあ!」
佳奈は、荒げた声で叫んだ。佳奈は亮太と同じ年ながら姉的存在で、いつも亮太の世話を焼いている。
口数が少なく、行動の遅い亮太とは反してガミガミうるさく、行動派の佳奈は亮太が心配で仕方ない。
「あー、もうすぐ行くー」
亮太はだるそうに返した。その口調にイラッときたのか佳奈は、すぐさま急かした。
「時間ないから!アンタ、ホント遅いねーさっさとしてよ!」
しばらくすると、亮太が2階からノソノソと降りてきた。
佳奈に、ひととおりの持ち物チェックをされた後、2人はようやく家を出た。
「あんたさ、人を待たせてる自覚あんの?」
佳奈はクドクドと亮太に説教する。その様を亮太はボケーと聞きながら、佳奈が怒らない程度に相槌
を打つ。途中、聞いてないと分かると佳奈の説教は深いため息とともに終わる。
このやり取りは、毎日の事で亮太はもはや気にもしなくなっていた。
「あ、そうだ・・」
亮太はおもむろにカバンに手を突っ込み、ipodを出すと音楽を聴き始めた。
佳奈はそれを横目で見ながらなんて自由人な奴だと、またため息を付いていた。
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