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「出発」
学校に着くと、さっそく亮太の親友である孝太が近づいて来た。
「亮太、お前さ京都マップ買ってきた?」
「あ、忘れた・・」
「やっぱりな、お前は100忘れるって思ったから俺が買ってきたわ。お前いい加減だよなあ」
孝太も小学生からの付き合いで、既に亮太の性格は熟知していた。孝太も佳奈と同じで、適当な亮太の面倒を常に見ている。
何事にも妥協出来ない性格で、ストイック。そんな自分の性格の真裏を行く亮太の性格は、不思議と孝太に安心感と言うか落ち着きを与えていた。憎めない性格の亮太が、孝太は好きだった。
「お前ら、そろそろ体育館に来いよー」
担任の河合が、教室のドア越しに声をかけた。生徒達は、ひととおり話しに区切りが付くと体育館に向かった。
体育館では、恒例と言うか、お決まりの注意事を延々と聞かされる。
終いには、再度持ち物チェックをさせられる始末。この一連のやり取りだけで、随分と疲れるものだ。
1時間にも及ぶ事前説明を受け、気疲れした生徒達は校門前に集められバスに乗り込んだ。
ここからさらに空港まで走り、新幹線に乗る。目指すは、修学旅行の地「京都」。
新幹線の中で、トイレに向かった亮太はたまたま通路で佳奈に出くわした。
佳奈は違うクラスで、学校では滅多に会わないのに出くわした。
「ジャマ!ボサッとしない!」
佳奈はそう言うと、足早に席に帰っていった。亮太は
「なんだアイツ・・」と、呆れた顔でその様を見ていた。
トイレは随分と混んでいた。亮太は窓の外に流れる風景をボーと、見ていた。
さっきまで降りしきっていた雨は、弱まっているようだったが亮太は気にせずただただ見つめていた。
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