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亮太がトイレを済ませ、席に戻ると隣に座っていた修学旅行で同じ班になり行動を共にする予定の隆史が、訝しげに本を見ていた。
「どしたの?怖い顔してさ」
亮太が声をかけた。同じクラスながら隆史とはほとんど話した事がない。だから、亮太にしては珍しく話ししないと。っと思い、話しかけた。「いや、いま幕末の年表を見てたんだけどさ・・・薩長同盟って、坂本龍馬が成し遂げた偉業だったよな?」っと、隆史は言う。しかし、歴史にまるで興味が無い亮太は詳しく理解していなかった。だから曖昧にしか答えなかった。「あ?そうなんじゃね?」
隆史はそれでも腑に落ちない表情で年表を眺め、「うーん?僕の間違いかな?気のせいか・・」隆史は呟いた。亮太は、こんな所でも旅先の予習までして堅い奴だ程度にしか思わなかった。「トイレ行ってくるよ」隆史はそう言うと、席を立ちトイレへと向かった。
亮太は後ろで騒ぐクラスメイトを他所にipodを取り出し、音楽を聴きボンヤリと外を眺めた。列車の外の風景は、その景色等過去の物だと言わんばかりの速さで後ろへと押し流していた。外に広がる景色は田園風景で、雨にも関わらず農作業に出ている人がたまに見えていた。亮太はどこか懐かしさを感じる風景に、不思議な感覚を感じていた。チラッと隣の隆史の席に目をやると、年表のページがそのままに開かれていた。
”1866年3月7日 京都で薩長同盟成立。西郷隆盛・小松帯刀・桂小五郎が会合。土佐浪士 中岡慎太郎立案”
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