12人が本棚に入れています
本棚に追加
「裕二には話したのか」
「…‥うん‥話した。元気でなっていってくれたよ」
雅人の手が俺の背中に触れた。
「夕貴もそう言ってくれないの」
雅人の瞳に映る自分の顔が見れるほど近くに顔を近づけてきた。
「………元気で…メールも電話もする」
雅人の顔が見れず芝生に視線をそらして呟くように言う。
「ありがとう、夕貴」
背中に触れた手が俺の髪をくしゃっと撫でる。
さっきよりもほころんだ笑顔。
「………なんだよ‥なんでそんなに笑ってんだよ!いいのかよ…俺たちと別れても、寂しくないのかよ」
くそっ!引っ込めよ涙!
「寂しいよ‥すごく。でも俺は、母さんの傍にいなきゃいけないんだ…母さんはいままで俺をかばって殴られたから。これからは俺が守らなくちゃ…夕貴ごめんね…ごめん」
俺は立ち上がって雅人を置いてその場を走って離れた。
あんなに清々しく晴れていた空はいつの間にか曇ってきて、遠くで雷が鳴っている。
雅人を迎えに行こうか迷ったけどもうすぐ昼休みが終わる。
雅人だってすぐに来るだろうと思い俺はそのまま校舎に入った。
教室前の廊下で裕二を見つけた。
「裕二、雅人の事おまえはあれでいいのかよ」
顔をあわせるなり喧嘩腰の俺を不思議そうに見つめ、暫くして何のことを言われたのか分かったように「あぁー」と頷いた。
「雅人の家庭の事情を俺がとやかく言えた立場じゃないだろ」
冷静に言葉を返され俺はイラッとした。
「それはそうだけどおまえは寂しくないのかよ!」
寂しい?そう繰り返した裕二は壁に寄りかかり腕を組んだ。
「寂しいとか離れたくないとか夕貴は想っているのか?……いつまでも傍にいるのが友達とは限らないんだよ…夕貴、雅人の話がおれと同じならあまり雅人を困らせるようなことはするなよ」
諭す口調ではなく、宥めるわけでもない裕二の言葉は正論すぎて自分がガキの駄々っ子のように思えた。
「わかってるよそんな事!」
そう言って裕二を睨んだ。
「あっ二人とも早く教室に入らないと」
駆け足で戻ってきた雅人が俺達に声をかけた。
いつもの笑顔…いつもの声。
俺は雅人に促されるまま教室に入り席について。
ここはなにも変わらない。
でも俺の中では目まぐるしく変化している。
ねぇ…雅人
あとどれくらい一緒にいられるのかな?
最初のコメントを投稿しよう!