包帯

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毎日毎日お前の腕に巻かれる包帯。 毎日毎日 顔色変えず隠しもせず。 平然と座り周りも見ず。 頬杖をつき空をボーっと眺める。 別にお前と俺には何の接点もないから、さして何も思わなかった。 ……最初のうちは……。 いつからだろう。 お前が、凄く愛しく思えるようになっていたのは…。 こんなにお前の存在が大きかったなんて。 いつしかお前の左腕を覆う包帯が 羨ましく思えた。 疎ましく思えた。 ずっと側にいて、ずっとお前を守っていられる。 それなのに俺は周りに便乗して 気持ち悪いと。しねと。 いなくなれと。くたばれと。 囃し立てた。追い詰めた。 事実、便乗して発した言葉に嘘は無かった。 あれは全て、お前の左腕の包帯に放った言葉だったから。 お前の葬式で泣いているクラスメイトは、俺だけだ。 俺の友人は何で泣いてるのか分からず、苦笑い気味で俺の背中を擦ったり、肩を叩いたりしたけど、 今のこの瞬間ほど、気持ち悪いと思った事は無い。 友人の手が。友人の顔が。 全部全部、気持ち悪かった。 お前の居なくなる人生が、こんなに真っ暗で、吐き気の伴うものだなんて思いもしなかった。 こんな事になるならもっと… もっと…… 「あの、すみません…もしかして…玲次くん?」 遠慮がちに声を掛けたのは、お前の母親だった。 ...
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