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それは思ってた以上に穏やかな表情だった。
そして…
お前の亡骸に、包帯は無かった。
その代わり……
「ありがとう…恵一を、愛してくれて……」
後ろで母親が泣いている。
俺も涙が止まらなかった。
お前の腕に深々と彫られ続けたであろうその傷は、俺の名前だった……
「……玲次くん…これをっ…私宛の手紙に……恵一がっあなたに…って……っ……」
手渡された、妙に綺麗にラッピングされた袋の中には、
お前の巻き続けてた包帯と、
ありがとうと書かれたメッセージカードが入っていた…。
「お母さん…恵一に触れても、良いですか?」
母親は声を押し殺し、数回首を縦に振ってくれた。
俺はそっとお前の頬を撫でて、唇に、キスを落とす…。
冷えきったお前の唇…。
「愛してる……恵一…愛してるよ…」
俺は出来うる限りの笑顔で最期まで、恵一に、別れの言葉を呟き続けた…。
「恵一…愛してる………」
End...
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